◆◆軟弱者の富士登山記◆◆


静岡県生まれなので富士山は間近で見ていた。 今でも親戚のところに行けば目の前には富士山の優雅な姿を眺められる。 東京で高いビルに上ったら見えるし、もっと遠くの北関東にある実家の町でも空気が澄み渡った日には静岡でみる富士山の十分の一くらいではあるが、富士山を見ることができる。 北関東にある町なのに富士見坂、富士見町なんてー名前まであるんだからやっぱり日本一の山は高いのだ。

毎年7月1日あたりの山開きのニュースを見るたびに、「ありゃあ、見るもんで登るもんじゃないだろう。」と思っていたのだが、体力のあるうちに一度はやってみたいぞ富士登山!と思い始めたのは数年前。 去年あたりは「日本人なら一度は登らんといかんだろう!」と思いがますます強くなっていた。 

しかし私ときたら足を押さえてないと腹筋は1回もできないし、徒歩15分の距離を躊躇するような軟弱もの。 登りたいけどそうとう体力つけてからじゃないと無理かもねえ、などと心の中でひっそりと思い誰にも話したことがなかった。

ところが、数ヶ月前、アメリカにいる友人とのメールのやり取り中、一度は行きたい場所話の一環で「いつの日か富士登山したいんだけどねー」となにげなく書いたら、相手が「私も絶対にご来光みたい!夏に帰国するから行こうよ。」と乗ってきたので急遽プラン作りが始まった。 言い出した私が全部決めていいそうなので(というか、私が一番体力がないから私にあわせた軟弱者プランを作るため(−−;))富士登山経験者の友人やその手のHP、雑誌などをパラパラめくって予定を立てはじめる。 

◆アタシ富士山頂目指すから。。。◆

5月に入ってから周りにそのことを話し始めた。

「堀井健一郎さんが70歳でエベレスト登れたんだから今から始めても大丈夫だ!」(最終目標はエベレストなのかー?)
「日本人なら一度は登りたいよね! という私は絶対にしない」(といって同時期に山中湖に遊びに行くから下山帰りに寄れといわれた)
「登れ登れ、そして天下とってこい!」(天下とれるのか!それは楽しいかも)
「2年越しの富士登山プランで今年は予行練習するんだって?」(あーあー、そうですよ、はいはい)

等々激励メールや電話がきた。 (カッコ内は私の思いです) 体力ないし、低血圧でいつもフワフワ歩いている私が突然2ヶ月後には富士登山をすると宣言したので周りは応援しつつも半信半疑だが、一番そう思っていたのは本人だったりする。 あのてっぺんまで登れるの?

高山病?◆

旅行代理店勤務の高血圧男な友人と血圧の話になる度に「あーお互いの血圧足して2で割りたいよねえ」と嘆く。 以前添乗で富士五合目まで行った時、高度に順応できず、血管が切れるかと思うほどの酷い頭痛で仕事にならなかったそうだ。 「高山病は怖いよ」と今回も言われたが、実は高山病だけは心配していなかった。 以前極寒の2月、フランスのシャモニからモンブランの見渡せるエギーユ・デュ・ミディの展望台(標高3842m)にロープーウェイで行った時も1人でケロケロしていたし、標高2240mのメキシコシティーの空港で乗り換えの飛行機に遅れそうになり飛行場をダーッと走ってゲートカウンターの人に 「苦しくないの?」と驚かれたことがあった。 後から息も絶え絶えの友人がカウンターにたどりついた時は頭痛で眩暈がすると言っていたが私だけは平気だった。 そんな経験がチラホラあったので、標高の高いところは平気なのでは?と漠然と思っていた。 VIVA低血圧♪と思える数少ない瞬間かもしれないぞ?

◆決行プラン◆

やっぱり登るからにはご来光は見たい。 でも、夕方7時くらいから登り始め夜通し登り、朝日の昇る4時半までに頂上へ!というのは私には絶対に無理だから途中の山小屋で6時間くらい休憩して、また深夜に登るプランにした。 ただひとつの心配事は平地ですら苦手な湿気と雨。 富士登山の期間は夏季限定の2ヶ月間だけという短いものなので、雨に降られないためには梅雨明けしてからの7月下旬がお勧めらしい。 しかし、梅雨があけると夏休みシーズンで大変な混雑になると知った。

頂上までの細い登山道はご来光ラッシュであとからあとから人が登ってくるので自分のペースで登れなくなって無理をする場合が多いらしい。 それでも登山道の端によって後からくる人に先に進んでもらえばいいのかもしれない。 でも、もっとびっくりしたのが山小屋だ。
山小屋はピーク時は45度で寝るらしい、人数を稼げるように半分のスペースにするために横を向いて寝るのだそうだ。 おまけにこれもできるだけ多くの人数を収容するために布団は1枚で2人、男女相部屋はもちろんだが、頭と足の交互に横になって寝ると書いてある。 つまり、他人様の足が鼻の前にある状態。。。これは辛い。 酸素の薄いのは平気だろうが犬鼻とまでいわれる嗅覚持ちなので他人様の足の臭いをまともにくらうのは辛い。

できればそういう事で登山をめげてしまうのは避けたい。 楽しみにしている始めての富士登山、何も知らない最初からの過酷な体験は避けたい。 どうせ体力ないんだから変なストレスがかかって登山の思い出が苦痛にならないためにも「最初っからそれは嫌!」と思うことをできるだけ削除することにした。

混雑が嫌なら山開きした途端に行けば人も少ないからそういうストレスないじゃん!と日程は7月1に山開きしたばかりの4日後に決定。 そして週末は混雑するのでわざと金曜日に出発。 これで「最初っからそれは嫌!」のリストの90パーセントは解決する。 登山ルートも5個所(河口湖口、吉田口、富士宮口、御殿場口、須走口)あるが、一番空いているという須走口に決めた。 残りの梅雨の時期での雨の問題があるが、雨は私が登るときは降らないと勝手に思うことにした。  軟弱? いえいえ知恵よ知恵!( ̄^ ̄)

予約

新宿からまずは御殿場までのバス(小田急)を予約する。 その後御殿場から須走口新五合目までのバス(伊豆急行)の予約の為に電話をしたら「予約はとらないので当日に購入してください。まだ混雑していないから大丈夫ですよ。」とのこと。 ただ、7月11日からは30分から一時間ごとにでるらしいが私たちが行くときは午前に一本、午後に一本しかでない時期なので「午後のバスに乗り遅れたらタクシーで五合目まで7000円か歩いていくことになりますから注意してくださいね」と言われる。  

山小屋の予約をするにもまだ山開き前なので山小屋の電話が通じない┐(´-`)┌  登山経験者のHPで調べてお勧めとの意見が多かった須走口の本七合目の山小屋「見晴館」は自宅の電話番号ものっていたので無事予約もとれた。 ここでも「まだまだ予約しなくても平気な時期ですけど予約受けますよ」と快く受けてくださった。 5月下旬にこの先走り状態、この気力が7月まで持つかどうか心配になってきた(笑)

◆パッキング◆
何をもっていけばいいのか
懐中電灯(夜間登山のため)、軍手、フリース、ヤッケ、ステッキ、着替えのTシャツと靴下、サングラス、ゼリー飲料、チョコレート、常備薬、タオル、やっぱりカメラ、そして旅のお供の猫太郎(爆)

富士登山お勧めといわれる30リットルサイズのリュックよりも小さいので中味がぎっしりになる。 最後の最後までかさばるフリースを持っていくかどうかで悩んだのだが明け方の頂上は激寒とのことなので持っていくことにした。 (持っていって正解でした)

◆出発当日の朝◆
出発当日、テレビで朝のニュースをみていたら「静岡県大雨洪水注意報」がでていた。 東名高速も途中通行止めになっているらしい。 御殿場インターはその手前だけど、東名のあの渋滞にあたったら絶対に間に合わない。 ちょっとだけ不安になったので早めに新宿のバスセンターに出向いて予定していたバスよりも30分早いバスに変更してもらう。 登山ルックの私達の他は御殿場のアウトレットモールに行くお客さんで一杯のバスに乗って出発。 途中東名高速から富士山が見えた。 「あれに登るんだよ!本気かよ!」 とまだ半信半疑、 逆の方向には御殿場のアウトレットモールが見えた。
「こっちでお買い物のほうが絶対に合ってるよねえ。。。あはははは〜」と自分で思ってどうする!

御殿場駅から須走新五合目へのバスにも無事に間に合った。 
マウント・フジィの魅力は海外では有名なので外国人が多い。 しかし、みなさんカッコがさ、半そで、半ズボンとかなのよね。 それで本当に明日の朝、激寒の頂上に行くのですかー? やはり脂肪のつき方が東洋人とは違うんだなと久しぶりに納得。

(五合目にて休憩中。 また今回私も一緒にいったのだよ)


てなわけで登りますぜ!